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る。利用団体の中には当然厳しい研修を行う所もあるが、厳しさの中で“ホッとする場所”を提供することが、「連れて来られた」という意識の利用者に対し、いささかなりともイメージアップにつながるのではないかと思う。つまりは、以前ならば厳しい研修のイメージが先行し、「もう2度と行きたくない」という意識が利用者に先立ったが、たまり場機能・ホッとする場所を提供することによって、「あの研修はつらかったけれど、青年の家には素敵な場所がいっぱいある。今度は個人として自由に使ってみたい」というイメージを残すことが可能になるからである。そして、そのような小さな積み重ねによって、青年が自ら集まってくる施設になっていくのである。

 

第6条 マップ・カレンダーづくり
青年の家の利用者は数字で見ればかなりのレベルにあるのだが、これが青年の家の知名度と必ずしも一致しないことは周知の事実である。前述の『青年の意識と青年の家利用に関する研究』によれば、“名前ぐらいは知っている”というレベルの者の数はかなりいるわけだが、多くは学校利用などで「連れて行かれた」といった意識を持ち、利用期間中に青年の家を理解する機会がなかったと考えられている。『青年の意識と青年の家利用に関する研究』は、青年の家の知名度を高める施策が依然として必要であることを訴えている。
青年の家の教育効果を利用率や利用者の多寡で計るがごとき発想は、大学の進学率を競い合うような、学校教育の悪しき側面にも似ており、社会教育の世界では最も忌むべきことなのだが、一方、実際に青年の家を利用していただかなれば、どんな素晴らしい教育理念を掲げても空理空論のそしりを免れない。確かに、利用を促進するための情報や、利用者に役立つ質の高い広報は常に求められており、そのためのPRをおろそかにすることはできない。
東京家政大学の伊藤俊夫教授は常々、PRの方法として有効なのは2種類のポスターを準備することであるとおっしゃっている。一つは知名度を高めるためのポスターで、派手な図柄に鮮烈なコピーを配したアイキャッチ効果の高いもの、もう一つは必要な情報を丁寧に盛り込んだポスターである。リーフレットやパンフレットもこれに準ずる。このPR方法はこれとして従来通り必要不可欠なものではあるが、もう一考えるとすれば、それは地域に対しての効果的なPRである。当国立中央青年の家では静岡県教育委員会と共同で、県内の各青年の家・少年自然の家と合同のポスターや体験学習についての資料を作成し、平成8年度に広報に努めた。これは、県内の青少年教育施設がともにその個性を生かして相互補完しあうということをめざした取り組みである。また、地元御殿場市の市政カレンダーには当中央青年の家の主催事業『青年の家まつり』の日程が印刷されており、このカレンダーは市役所から御殿場市の全世帯に配布されている。これなどは、地域に密着した取り組みが広報面で実を結んだささやかな一例である。

 

第7条 路地裏コミュニティーの復活とネットワーク
過去、青年の家が期待され、また、果たしてきた役割は、“宿泊しながら充実した研修や活動ができるプログラムを持ち、社会や時代の要請にこたえる主催事業を行う”というものであった。これが大きな成果をあげてきたということ

 

 

 

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